いきなりだが、以下の記事を見て欲しい。
「ゲームは1日60分」香川県議会が全国初の規制条例制定へ 反発も相次ぐ – 毎日新聞
最近話題の、香川県で制定されようとしている「ゲーム規制」の記事だ。
これについては、Twitterでも色々と批判の声が上がっている。
私もこの制定には反対だ。
そう思った理由をつらつら書いていこうと思う。
概要
まず、記事の概要を紹介しよう。
香川県で、「ゲームは一日1時間」や「夜9時以降はゲーム禁止」といった、子どものゲームを制限するような条例を制定しようとしている。
この狙いは、子どものゲームする時間を制限することにより、「ゲーム依存」を抑えようというもの。
また、上の記事では、あくまでこれは「目安」であり、罰則等は設けていないと解説している。
そもそもこの条例を定めるきっかけとなったことも言及しておこう。
世界保健機関(WHO)が、2019年5月に、「ゲーム障害」を新たに依存症として認定した、ということが挙げられている。
これがきっかけとなり、対策を求められた結果、この条例を定めよう、という流れだ。
なぜ反対なのか
最初に、大元の「ゲーム依存」について解説しよう。
これは、日常生活に支障をきたすような実害があるにも関わらず、ゲームをやめることができない状態である。
他にも、ギャンブル依存など、とにかく「依存」という状態がまずいよ、というわけだ。
それを防ぐためにゲームの時間を制限する、という部分について、いくつか突っ込みを入れていく。
単なる対処療法でしかない
今回の条例は、単に「ゲーム依存が問題になっている」という事実しか見ていない。
そのため、「じゃあ制限すればいいじゃん」と制定しようとしているように感じられる。
しかし、実際はどうだろうか。
ゲーム依存になってしまうことには、何かしらの原因があるだろう。
例えば、「学校が嫌になって家から出なくなった」とか、「家族内でトラブルがあり、部屋に引きこもっている」とか。
そして、その結果として、そこで十分に楽しめる「ゲーム」にハマり、そのまま依存してしまう。
つまり、根本を解決しないと、例えこの条例によってうまくゲームを制限できたとしても、今度は別のものに依存してしまう。
要するに、根本的な解決には至らないのだ。
子ども全員がそうではない
ゲーム依存、と呼ばれる状態の子は、果たしてどのくらいいるのだろうか。
これは、「国立病院機構久里浜医療センター」というところが実際に調査をしている。結果のまとめはこちら、実際の調査内容はこちら。
ここから具体的な数字は見えるが、ちょっと全部読むのも大変だろう。そこで、まとめたものもリンクを貼っておく。
厚生労働省による、「ゲーム依存症対策関係者連絡会議」というものの資料だ。こちらから見れる。
このスライドの5ページ目「中学・高校生のネット依存が疑われる者の割合の変化」に書かれているのだが、なんと93万人もの中高生がネット依存の疑いがあるというのだ!
…と書いたが、注意してほしい。これは、あくまで「疑われる」人の数だ。実際にはもっと少ない。
それに、こちらの記事でも言及されているのだが、今回取られている統計手法は、数字が大きく見えてしまうという特徴がある。
このことからも、実際にはもっと少数の人が依存症ということになる。
…さて、全国には、そもそも中高生が何人いるかご存じだろうか。
これも統計を持ってくるが、総務省の公式サイトに統計がある。
これによると、12歳から18歳までの人数は約800万人。
元の統計の人数である93万人がそのまま全員依存症だとしても、10%程度しかいない。
上の理由から、実際はもっと少ないだろう。
ということは、その多くても10%のために、全員に対する制度を導入しようとしていることになる。
いくらなんでもやりすぎだろう。9割の子どもが巻き添えを食らっているのである。
ゲームを制限したら何をしろと…
最近、公園での注意書きが話題になっている。
香川県ではないが、軽く調べて出てきた、東京のとある公園の注意事項がこちらにある。
ざっと見ただけで、球技禁止、騒音禁止などなど。
これでは、子どもが公園で遊ぶのも無理だろう。
香川県の公園がそうとも限らないが、そうだとしたら外で遊ぶこともできず、家でもゲームができない。
一体、何で遊べばいいのだろうか。そもそも遊ぶなということなのだろうか…
ゲーム制作側から見たら…
この条例についての記事を見てみると、そもそも「ゲーム」というもの自体が悪であるかのように扱われているように感じる。
そうすると、ゲームを作っている側からしたらたまったもんじゃないだろう。
何のためにゲームを作っているのか。もちろん、遊んでもらうためだ。
それを制限でもされたら、ゲーム業界に影響を与えかねない。
今回は香川県だけだが、これが実際に実施されてしまうと、他の自治体も真似して制定するところが出てくるだろう。
たかが1県のこと、と侮ってはいけない。
じゃあどうすればいいのさ
色々書いてきたが「ゲーム依存が問題で、解決すべきだ」という意見自体には賛成だ。
そのため、じゃあどうすればいいのか、という部分について思った事を書いていく。
そもそもの原因を解決する
本当にすべきはこれだろう。
上にもちょっと書いたが、ゲーム依存になってしまうのには原因がある。
例えば、人間関係のトラブル。
学校で他の生徒にいじめられるとか、家族間でトラブルがあって心を閉ざしてしまうとか。
これについては、一度に全体を、という対応はそもそも不可能だろう。なぜなら、一人一人原因が異なるからだ。
これについては、相談センターなどを設置して、対応していくしかないだろう。
実際、それが現実的でないことも分かっている。それができるならすでにされているはずだ。
では、現実的なものを挙げてみよう。
子どもに理解してもらう
これが、一番現実的かつやるべきことなのではないだろうか。
そもそもゲームをすることのメリット・デメリットをしっかり解説して、その上で正しい方法で遊んでもらうのだ。
ところが、実際は「ゲームは1日1時間」とだけ言って、それを守らせようとする。それでは、子どもからしても「なんで?」となってしまう。
子どもだって我々と同じ一人一人の人間だ。ただ指図するだけではなく、しっかり話し合って、理解してもらうことが重要なのである。
ゲームをすることのメリット・デメリット
さて、では実際にどういったメリット・デメリットがあるのだろうか。まずはメリットから。
まず、全般に共通していることとして、楽しい。これが一番だろう。
そして、それぞれのタイプで見ると…まずRPGなら物語としての一面もあるため、人の感情やその環境の動きなどを考えることができる。
アクションや音楽ゲームなら操作を覚えて実行する、といった物事の身に付け方を学ぶことができる。
カードゲームなら戦略を立てれるし、作業ゲーでも効率的な方法を考え、試行錯誤なんかもできる。
案外、ゲームで得た経験もばかにできない。
次にデメリットを考えてみよう。
まず、目が疲れる。視力が下がるとも言われているし、そんなにいいものではないだろう。
次に、これは最近のオンラインゲームに多いのだが、知らない人と交流ができる。
これはメリットにもなるのだが、その相手が悪意を持っていた場合、とても怖いことになりかねない。
そして…度が過ぎると、今回の話題のように「依存」まで発展してしまう。
さて、実際にお子さんがいる保護者の方は、こういったものをしっかり子どもに説明しているのだろうか。
まとめ
色々書いたが、要するに「依存対策するならもっと根本的な部分を解決しようよ」というのが、私の意見だ。
ゲームは、やり方さえ間違えなければ、勉強の材料にもなるとさえ思っている。
それをしっかり理解してもらった上で、遊んでもらうのが本当に今すべきことなのではないだろうか。
オマケ:ゲームを制限すると勉強する時間は増えるのか?
さて、ここからはオマケだ。
もしかしたら、「ゲームを制限しても勉強ができるようになるわけじゃねぇよ」って意見があるかもしれない。
これは、論点がずれている。でも、それについても私の意見を書いておこう。
結論から言うと、この意見には賛成で、ゲームを制限しても勉強時間は増えない。それどころか、学力が下がるとも考えている。
皆さんも分かるかと思うが、やれと言われてする勉強…子どもにとっては学校の勉強がこれにあたるのだが、はっきり言って楽しくない。
で、そんな楽しくないことをやるのはなかなかに苦痛だろう。
そんな嫌なことができる時間を増やしたからといって、果たして本当にやるだろうか。答えはノーだ。
だったら、息抜きとしてちょっとくらい好きなことをした方が、ストレス発散にもなるし、むしろ勉強にも効果的だと思う。
なので、テスト前や受験のときも含めて、ずっと勉強し続けるより、たまには息抜きを入れるべきだ。
かといって、その息抜きの時間の方が長くなってしまっては本末転倒なので、そのあたりは計画的に。
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