中学時代、以下の性質を習うと思う。
有限小数を分数に直して、その分母を素因数分解すると、素因数が2と5だけになる。
あるいは、逆にある分数の分母を素因数分解して素因数が2と5だけなら、その数は有限小数である。
確か、中学の時はこの事実だけ教えられ、これを使って実際に判定するような問題があったように記憶している。
…本当だろうか。
というわけで、今回はこの証明をしてみよう。
わりと簡単なので、理解に難しい部分はないと思う。
今回説明する内容
改めて、今回証明する定理を。
ある有理数が有限小数であることと、これを分母で表した時の分母の素因数が2と5のみであることは同値である。
証明の前に、簡単に例を見てみよう。
例えば、0.03という数について。
これは、小数第2位までなので、有限小数だ。
これを分数に直すと\(\frac{3}{100}\)で、分母を素因数分解すると\(100 = 2^2 \times 5^2\)。
つまり、分母の素因数は2と5のみ、となっている。
今は具体例で見たが、これがどんな有限小数でも成り立っているよ、というのが定理だ。
では、これを証明してみよう。
今回注目している数を\(a\)と置いておく。
条件1を「\(a\)は有限小数である」、条件2を「\(a\)の分母の素因数が2と5だけである」として、以下2つを証明していく。
- ステップ1:条件1を前提として、条件2が成り立つこと
- ステップ2:条件2を前提として、条件1が成り立つこと
ステップ1:有限小数なら分母の素因数が2,5のみ
まずはこちらから。
\(a\)が有限小数であるならば、その分母の素因数が2と5だけであることを示していく。
最初に、\(a\)は有理数であり、分数の形に書き直すことができる。
二つの整数\(n, m\)を使って、以下のように書き直しておこう。
$$a = \frac{n}{m}$$
ちなみに、この\(m\)は0ではない。
また、この分数はすでに約分されているものとする。
もしまだ約分できる形の場合、約分しきって、その後に改めて\(n, m\)で置き直せばいい。
さて、\(a\)は有限小数なので、必ず小数第何位かまで続いている。
小数第\(i\)位までとしておこう。
念のため、\(i = 1\)の時は0.1や0.2、\(i = 2\)の時は0.12や0.53のような数になっている。
この\(i\)を使って、上の式の両辺に\(10^i\)を掛ける。
$$a \times 10^i = \frac{n}{m} \times 10^i$$
この式に注目する。
左辺は、整数同士の掛け算なので、明らかに整数だ。
つまり、右辺も整数にならなければいけない。
そして、前提から\(n, m\)ではこれ以上約分ができないので、必ず\(m\)と\(10^i\)で約分できることが分かる。
さらに、約分した後に\(m\)が1となっている。
ということは、この\(m\)の素因数に2と5以外の数が入っていることはあり得ない。
もし入っていたら、約分しきることができず、右辺は分数のままになってしまうからだ。
よって、こちら側は正しい。
ステップ2:分母の素因数が2,5のみなら有限小数
次にこちら。
\(a\)を分数にしたときに分母の素因数が2と5のみなら、\(a\)は有限小数である、という内容を示していく。
先に、\(a\)を上と同じように整数\(n, m\)を使って分数に置き直す。
$$a = \frac{n}{m}$$
また、\(m \not = 0\)、右辺の分数はこれ以上約分できないという条件も忘れずに。
まず、前提から分母の素因数が2と5のみなので、0以上の整数\(i, j\)を使って…
$$m = 2^i \times 5^j$$
と書き表せる。
これを使って、式変形をしてみよう。
$$
\begin{eqnarray}
\frac{n}{2^i \times 5^j} & = & \frac{2^j \times 5^i \times n}{2^i \times 5^j \times 2^j \times 5^i} \\
& = & \frac{2^j \times 5^i \times n}{10^{i + j}}
\end{eqnarray}
$$
こうなった。
分子は全て整数の掛け算なので整数、分母は10の累乗だ。
ということは、明らかに有限小数となっている。
よって、こちらも成立、最終的に正しいことが示せた。
おわりに
今回、純粋にやりたかったのでやっただけだ。
後悔はしていないが、公開してみるとしよう。
これからも、たまーにこういった数学のお話をしていこうと思う。
何気なく使っているものでも、結構面白い発見がある場合もあるので、よかったら色々と注目してみよう。
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