フェルマーの最終定理を一部証明してみよう-完結編-

紹介系

前々回、大まかなあらすじ証明に使う手法を解説した。

フェルマーの最終定理を一部証明してみよう-あらすじ編- | Shino’s Mind Archive

前回、途中で使用する式変形を解説した。

フェルマーの最終定理を一部証明してみよう-準備編- | Shino’s Mind Archive

さあ、準備は整った

今回は、ついにフェルマーの最終定理
一部(\(n\)が4の倍数のとき)を証明していこう。

前回までの内容が分かっていれば、そんなに難しくない。

是非、追ってみて欲しい。

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\(n\)が4のとき

まずはここから見ていこう。

改めて、証明したい内容を書いておく。

以下の等式を満たす自然数\(x, y, z\)の組は存在しない。

$$x^4 + y^4 = z^4$$

これだ。

では、無限降下法…つまり背理法を用いるので、
この組み合わせが存在すると仮定しよう。

なお、\(x, y, z\)はそれぞれ互いに素であるとしておこう。

もし最大公約数が2以上なら、その4乗で両辺を割って、
互いに素として議論ができる。

そして、その中で\(z\)が最小となる組み合わせに着目する。

この、\(z^2\)を別の文字\(w\)で置き換えておく。

もちろん、\(w\)も自然数だ。

これを使って式を書き換えておこう。

$$x^4 + y^4 = w^2$$

また、\(x^2, y^2, w\)は互いに素だ。

さて、早速だが前回説明した式変形をしよう。

互いに素な自然数\(p, q\)を使って、
以下のように書き直せる。

$$
\begin{equation}
\left \{
\begin{array}{l}
x^2 = p^2 – q^2 \\
y^2 = 2pq \\
w = p^2 + q^2
\end{array}
\tag{1}
\right.
\end{equation}
$$

この\(x^2\)についての式を変形して、以下の式を得る。

$$p^2 = x^2 + q^2 \tag{2}$$

このとき、\(x, p, q\)も互いに素だ。

もし最大公約数が2以上でそれを\(d\)すると、
\(x^2\)も\(d\)の倍数、二つ目、三つ目の式から
\(y^2, w\)も\(d\)の倍数となってしまう。

\(x^2, y^2, w\)は互いに素だったはずなので、矛盾する。

では、(2)式に対して、もう一度式変形を行おう。

互いに素な自然数\(r, s\)を使って、以下のように書き直す。

$$
\begin{equation}
\left \{
\begin{array}{l}
x = r^2 – s^2 \\
q = 2rs \\
p = r^2 + s^2
\end{array}
\tag{3}
\right.
\end{equation}
$$

このとき、\(p, r, s\)は
どの二つをとってもそれぞれ互いに素となる。

これをさくっと証明してしまおう。

まず、前提から\(r, s\)は互いに素だと分かっている。

では、\(p, r\)の最大公約数が2以上だとし、
それを\(d\)と置こう。

そして、\(p = dp’\)、\(r = dr’\)と置いておく。

(3)式の3番目から、

$$dp’ = d^2r’^2 + s^2$$

このとき、\(s^2\)が\(d\)の倍数でないと、
左辺が\(d\)の倍数にならないので、
\(s^2\)も\(d\)の倍数となる。

ということは、\(s\)も\(d\)の倍数で…
となると、\(r, s\)が両方とも\(d\)の倍数となる。

しかし、前提で\(r, s\)は互いに素だと言っていたので、
矛盾した。

つまり、\(p, r\)は互いに素だ。

全く同じ方法で\(p, s\)も互いに素だと言えるので、
これら3つの数はどの二つを取っても互いに素
ということが分かった。

では、式変形を続けよう。

(1)式の2番目(\(y^2 = 2pq\))、
(3)式の2番目(\(q = 2rs\))を使って、
\(y^2\)を\(p, r, s\)で表す。

$$y^2 = 2pq = 2p \times 2rs = 4prs$$

4は\(2^2\)で\(p, r, s\)はさっき示した通り
どの二つを見ても互いに素なので…

どこかで見たような。

そう、前回の式変形の時にも使った通り、
\(p, r, s\)は全て平方数なのだ。

なぜかの説明もその時と全く同じだ。

というわけで、
自然数\(a, b, c\)を使って以下のように置き換えよう。

$$
\begin{equation}
\left \{
\begin{array}{l}
p = a^2 \\
r = b^2 \\
s = c^2
\end{array}
\tag{4}
\right.
\end{equation}
$$

これを、(3)式の3番目(\(p = r^2 + s^2\))に代入しよう。

$$a^2 = b^4 + c^4$$

…どこかで見た形だ。

そう、出発点である\(x^4 + y^4 = w^2\)と同じ形なのだ。

というわけで、
あとは\(a\)が\(w\)より小さいことを示せばいい。

もう後はひたすら比較を繰り返していくだけ。

まず、(1)式の3番目(\(w = p^2 + q^2\))から、
\(p^2 < w\)が分かる。

\(p\)は自然数なので、\(p < p^2\)。

そして、(4)式の1番目より\(p = a^2\)、
\(a\)も自然数なので\(a < a^2\)。

これを繋ぐと…

$$a < a^2 = p < p^2 < w$$

つまり、\(a < w\)が分かった。

どういうことかというと、
最小であったはずの\(w\)よりも小さい\(a\)を使って、
同じ形の式が作れてしまったのだ。

これが、矛盾だ。

よって、大元であった
\(x^4 + y^4 = z^4\)という組み合わせは存在しない

これにて、\(FLT(4)\)の証明が完了した

\(n\)が4の倍数のとき

もうここからは消化試合のようなもの。

一応、示したいものを以下に再掲しよう。

\(n\)を自然数としたとき、
以下の等式を満たす自然数\(x, y, z\)の組は存在しない。

$$x^{4n} + y^{4n} = z^{4n}$$

まず、指数法則より、以下のように書き直せる。

$$(x^n)^4 + (y^n)^4 = (z^n)^4$$

これで、\(x^n, y^n, z^n\)を新しく別の文字…
例えば\(a, b, c\)と置き換えてあげれば、

$$a^4 + b^4 = c^4$$

となり、これは上で示した通り存在しない。

よって、
元の\(x^{4n} + y^{4n} = z^{4n}\)となる組も存在しない。

以上、証明完了

残っている部分は?

あらすじ編にも書いたが、残りの部分がえげつない

ただ、奇数全てを言わなければいけないかというと、
そうでもない

厳密には、残りは奇数かつ素数であるような
\(n\)に対して証明ができればいい。

これも軽く示しておこう。

まず、\(n\)が偶数かつ4の倍数でないとき。

このときの\(n\)は、\(4m + 2\)と置き直せる。

これを使って書き直すと、

$$x^{2(2m + 1)} + y^{2(2m + 1)} = z^{2(2m + 1)}$$

$$(x^2)^{2m + 1} + (y^2)^{2m + 1} = (z^2)^{2m + 1}$$

となり、奇数の場合を見れば言えることが分かる。

次に、素数でない奇数について。

このうち、素因数となっている
最小の素数を\(p\)と置いておく。

もちろん、この\(p\)は奇数かつ素数だ。

で、\(n = kp\)としておこう。

もうなんとなく分かると思うが、

$$x^{kp} + y^{kp} = y^{kp}$$

$$(x^k)^p + (y^k)^p = (z^k)^p$$

と変形できるので、奇素数\(p\)が言えればOKだ。

まとめ:数学楽しいよ

今回、フェルマーの最終定理という
超難問の一部を証明した。

この問題は、私が趣味とはいえ
数学をやるきっかけとなった問題だ。

ぱっと見で、何を言っているかは理解できる

しかし、その証明となると
わけがわからない理論がバンバン出てくるのだ。

こんなにも奥が深いものなのか、と感動したものだ。

それ以来、数学系の本を買って
数式を追うことを楽しんでいる。

数学が苦手という方も、
やってみれば案外楽しいかもしれない。

この機会に、ちょっと触れてみてはいかがだろうか。

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