最近、とある動画を見た。
ある数学の定理を証明するまでの歴史を解説したものだ。
オリラジの中田敦彦さんが解説されている。
先に書いておくが、難しい話は一切出てこない。
そのため、数学嫌いの方でも抵抗なく見れると思う。
以下動画を貼っておくので、よかったら見てみて欲しい。
で、これを見て、数学熱が再発した。
というわけで、今回からちょっと数学をやっていこうと思う。
目標は、フェルマーの最終定理を一部証明するところまで。
…完全に動画の影響を受けている。
こんな面白い話を聞いたら、やらずにはいられなかった。
今回は、そもそもフェルマーの最終定理とは何ぞやということと、
どんな形で進めていくかを提示する。
次回から本格的な証明の準備に入っていこう。
なお、私はただ趣味でやっているレベルなので、
わかりやすさを優先しようと思う。
厳密な議論では抜け漏れがあるかもしれないが、
ご了承いただきたい。
フェルマーの最終定理とは
上に貼った動画をご覧いただければ分かるかと思うが、以下の定理だ。
自然数\(n\)が3以上のとき、
以下の等式を満たす自然数\(x, y, z\)の組は存在しない。
$$x^n + y^n = z^n$$
何を言っているかは分かると思う。
ただ、この証明は約300年もの間数学者を苦しめた。
で、これを完全に証明するには、余りに難しすぎる。
だから、今回一部とした。
なお、ここから先、フェルマーの最終定理と毎回書くのは長すぎるので、
\(FLT(n)\)と呼ばせてもらう。
FLTとは、Fermat’s Last Theoremの頭文字をとったもので、
括弧内の数字は、\(n\)乗するという数を入れる。
今回証明する範囲
今回は、\(n\)が4の倍数の場合に成立することを証明しよう。
つまり、\(n\)を自然数として、\(FLT(4n)\)を示す。
これだけであれば、
中学~高校くらいまでの内容が分かっていれば証明できてしまうのだ。
証明の概略…の前に
実は、概略を説明するためにも、ある言葉を説明する必要がある。
それが、無限降下法というもの。
これは背理法の一種なのだが、まずはこの背理法から説明しておこう。
背理法
背理法とは、本来証明したいことの否定を仮定し、
矛盾を導くことにより元が正しかったことを示す手法だ。
今回で言えば、存在しないことを示したいので、
存在すると仮定して進め、どこかで矛盾を起こさせる。
この矛盾というのは、ある主張に対し、
それが正しいと間違っているの両方が導けることを言う。
本来なり得ない二つの状態が同時に成立することが、数学における矛盾だ。
で、背理法では最初に仮定をしており、
それがまずかったので元が正しいと言える、という流れだ。
背理法の具体例:\(\sqrt{2}\)が無理数であることの証明
簡単な例で、\(\sqrt{2}\)が無理数であることを示してみよう。
まず、証明したいことの否定を仮定する、
つまり\(\sqrt{2}\)が有理数であると仮定する。
有理数とは、整数/0以外の整数で表せる数のこと。
というわけで、\(\sqrt{2}\)もこれで表しておく。
$$\sqrt{2}=\frac{a}{b}$$
ただし、\(b \not = 0\)だ。
また、\(a\)と\(b\)はすでに約分されているとしよう。
つまり、\(a\)と\(b\)の最大公約数は1だ。
では、この式を両辺二乗しよう。
$$2 = \frac{a^2}{b^2}$$
そして、両辺に\(b^2\)を掛ける。
$$2b^2 = a^2$$
ここで、\(2b^2\)は偶数だ。
つまり、\(a^2\)も偶数、元の\(a\)も偶数となる。
\(a=2c\)として、式を書き直してみよう。
$$2b^2=(2c)^2=4c^2$$
両辺を2で割る。
$$b^2=2c^2$$
さて、\(a\)の時と同じように考えてみると、
\(b\)も偶数であることが分かる。
ここで、\(a\)と\(b\)の前提を思い出してみよう。
\(a\)と\(b\)の最大公約数は1だったはずだ。
しかし、今両方とも偶数…2の倍数だと分かった。
つまり、最大公約数は小さくても2となる。
これが矛盾だ。
何がいけなかったかというと、
最初に\(\sqrt{2}\)が有理数と仮定したところ。
というわけで、この仮定が間違っていた、
つまり\(\sqrt{2}\)は無理数だと証明できた。
背理法の流れは、こんな感じだ。
無限降下法
無限降下法は背理法の一種で、
特に自然数といった下限がある場合に使える手法だ。
やはり背理法なので、
最初は示したいことの否定を仮定しておく。
それを式変形などで形を変えて、
元と同じ形の式を作り出す。
このとき、下限がある数について、
元の式より小さい数を含ませておくことがポイント。
すると、これを繰り返すことでどんどん数を小さくすることができる。
ただし、下限があるので、必ずどこかで止まるはず。
これでも、矛盾とできるのだ。
…言葉の説明では分かりづらいので、こちらも例を出そう。
無限降下法の具体例:\(\sqrt{2}\)が無理数であることの証明
上の背理法で示したものを、今度は無限降下法で示してみよう。
最初はやはり背理法なので、否定を仮定しておく。
つまり、\(\sqrt{2}\)は有理数と仮定して、
同じように\(a, b\)を使って式にしておく。
$$\sqrt{2}=\frac{a}{b}$$
\(a, b\)の条件も上とほぼ同じで、
\(b \not = 0\)、\(a\)と\(b\)の最大公約数は1だ。
ただ、上では\(a, b\)は整数と言っていたが、
\(\sqrt{2}\)は正の数なので、\(a\)と\(b\)も自然数としておこう。
で、両辺を二乗し、更に両辺に\(b^2\)を掛けておく。
$$2=\frac{a^2}{b^2}$$
$$2b^2=a^2$$
\(a^2\)は偶数で、\(a\)も偶数、
新たな自然数\(c\)を使って\(a=2c\)として計算を進める。
$$2b^2=(2c)^2=4c^2$$
両辺を2で割る。
$$b^2=2c^2$$
ここまでは同じだ。
さて、ここでさっき\(a\)に対してやったことと全く同じことをする。
つまり、\(b^2\)は偶数なので\(b\)も偶数、というわけで
また新しく自然数\(d\)を用意し、\(b=2d\)として再度計算する。
$$(2d)^2=4d^2=2c^2$$
また両辺を2で割る。
$$2d^2=c^2$$
さて、お気づきだろうか。
この形、上の方で出てきた\(2b^2=a^2\)と全く同じなのだ。
で、\(a=2c\)、\(b=2d\)なので、明らかに\(a>c\)、\(b>d\)だ。
つまり、式変形によってどんどん小さくすることができる。
ところが、ここに入っているのは、全て自然数だ。
自然数は、最小が1であり、それ以上は小さくならない。
これが、矛盾だ。
最初の仮定、\(\sqrt{2}\)が有理数だという仮定が間違っていたということになる。
よって、\(\sqrt{2}\)が無理数だと証明できた。
これが、無限降下法というものだ。
…話を戻すと、\(FLT(4n)\)の証明にもこれを使うよということだ。
\(FLT(4n)\)証明の概略
では、証明の概略だ。
とはいえ、実はほぼ無限降下法通りに沿って進めていくだけ。
まず、\(FLT(4)\)について、
自然数\(x, y, z\)の組が存在すると仮定する。
その一番小さい組について、
式変形を繰り返してもっと小さい数を含んだ形に変える。
しかし、一番小さいものを持ってきたとして矛盾を導く。
これで\(FLT(4)\)について示した後、
その倍数も成立することを言えば完了だ。
だが、これにもちょっと準備がいる。
どこかというと、式変形の部分だ。
具体的に言うと、ピタゴラスの定理の式を、
二つの数によって作り出すというもの。
次回、準備編ということでこの式変形を説明し、
それを使って次々回解決編として\(FLT(4n)\)を示そう。
コメント